東洋思想

気の概念

現実世界の一切の存在物は
「気」から成り立っており、
「気」は存在物を構成する究極の原始的要素と考えます。
「気」は万物のエネルギーであり、宇宙に編万している「気」が絶えず凝集と拡散を繰り返し、流動することで万物万事の生成、変化、消滅が現象化するという思想を古来中国の先人達は考えました。

また人間や動植物、あらゆる生命体も「気」の集合と考えます。
「気」は生命の根源であり
その内なる純粋な気を精気といいます。
精気が体内を不断に流動し循環する事で体の機能が働き生命が維持されるのです。
よく覇気がないとか精気が戻ったとか使いますが、
この覇気が「気」であり精気が「気」なのです。気の概念には
「人間の気」
「自然の気」
「原理としての気」に分けられ
「原理としての気」の中に
「陰陽論」「五行説」があります。


陰陽論

今から約三千年前、
宇宙の根源は陰と陽の二種の「気」から成り、この両者の「気の対立」と「和」によって宇宙万物が生成し消滅すると考えられました。

この世の全てはこの両者によってバランスが保たれているのです。

陰と陽は、宇宙全てに於いて対立と和合の繰り返しがなされており、間断なく変化変動しているのです。陰と陽は互いに相反する性質を持ち、互いに違うものでありながら、
絶えずぶつかり合い交合し宇宙に存在するありとあらゆる事象を生むのです。

陰と陽の関係を相対的に見ますと次のような関係になります。

陽の極みが天となり
陰の極みが地となり
陽の極みが太陽となり
陰の極みが月となり

季節や昼夜の移り変わりをとってみても、冷気(陰)と熱(陽)が互いに対立しあったり、和合しあったりして、気候の変化、気温の変化を作り出します。

陰陽論は大自然の法則であり何人たりとも変える事はできません。これが陰陽論の基本なのです。陰と陽がぶつかり交合する時に強弱の差が生まれます。

・「陰と陽」を「太極」とし陰陽の強弱が四象(陰、陽、陰>陽、陰<陽)を生むとした思想が「易」⇒「八卦」へと繋がります。
・「陰と陽」がぶつかり合う時の強弱が五つの気を生むとした思想が「五行説」「陰陽五行説」に繋がっていくのです。


『易に太極あり』

中心を太極(原子)とし、
陰と陽は太極から発生するものであり、太極とは易の本体であり宇宙の本体であるというのが「易」の思想です。
太極のないところに万物は生まれないという観念から
「中心なきものには物事を形成せず」と言われています。

太極は天地生成の前から天地滅亡の後まで、一瞬たりともじっとしている事はなく、時々刻々と活動しているのです。

「太極」は中和・調和の状態を現し、「太極」が動けば直ちに陰と陽の気、即ち“かたち”が同時に生まれてくるのです。
太極から陰と陽が生まれ、その陰からは純粋な陰と一陽混ざった少陽が生まれ、
陽からは純陽と一陰混ざった少陰が生まれ、
計四つとなり、これを「四象」といいます。四象が更に二つずつ変化し、八つの象が生まれます。
これを「八卦」といいます。
八卦は陰陽を表す符合によって象(かたち)がつくられてます。

八卦は更に八通りに変化して六十四卦の世界を創り出したのです。

五行説

「陰と陽」の二種の「気」が交合する時に強弱のエネルギーが生まれます。
その強弱のエネルギーは
「五つの元素」に分散され、
五つの気「五気」を作り出すのです。
それが木気・火気・土気・金気・水気です。
即ち、
地球が太陽を中心として自転と公転することで冷却(陰)と加熱(陽)が繰り返される時の陰と陽が生み出す強弱

・陽(加熱)の勢力が徐々に増して行く状態を「木気」
・陽の勢力が最も強い状態が「火気」
・陰の(冷却)勢力が徐々に増す状態が「金気」
・陰の勢力が最も強い状態が「水気」
・地球自体から発生する気を「土気」

この循環を示したものが五行の思想の原点です。五つの元素はそれぞれが特有の性質を持っており、性質の異なる気と気が、互いに和合したりぶつかりあい万物を生成し消滅すると考えます。

「五行」の「五」は
「五つの気」であり「元素」です。
「五行」の「行」は めぐるという意で、
五つの気が天と地の間をめぐる現象を「五行」といいます。

天地にある形ある一切の万物、形質はこの五元素「五気」により成り立ち、
宇宙を循環し移行し進展すると考えます。

性質の異なる五気五行が和合したり対立したりする関係を「五行の相生・相剋」といい、五気五行を九つの異なる性質に配分したのが「九性」即ち「九星」であります。



陰陽五行説

古来中国の先人達は、陰陽論と五行説を結びつけました。

陰陽論を拡げて行くと
五行説に通じ、
五行説を辿って行くと
陰陽論に通じた為です。

陰陽五行説は、古代の物理学であり、また人間道徳の原理であり、神学でもあります。
故に、あらゆる分野へと拡がってゆきます。

占術はもちろん、天文暦、医術、政治、軍学、文学、芸術に至るまで、全て陰陽五行説に関連しないものは一つもないのです。